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紙芝居：孝行者のこまさん

はっきりとは、わかりませんが、これは徳川の時代のお話です。鈍川(にぶかわ)の神子(みこ)の森に、〈こまさん〉と呼ばれる、それは、それは、親孝行な人がいました

この人の生まれた家は貧しく、田んぼや畑も持っていませんでした。それで、荷運びや山の仕事をしていましたが、暮らしは決して楽ではありませんでした。それというのも、父親が、頑固な上に、大変、気の短い人で、まわりの人と衝突ばかりしていて、仕事もうまくいかなかったからです

ある日のこと、〈こまさん〉は、父親と二人、山へ仕事に行きました。その日、朝から父親は、やたらと不機嫌でしたが、いつもの事と思い、気にせず、せっせと働きました。そのうちお昼になったので、持ってきたお弁当を開けて、父親に渡しました。

すると、いきなり怒り出した父親は
「こがな麦だけの弁当が食えるか！」
と怒鳴りつけ、弁当を谷へ「ぽいっ」と捨ててしまいました。
貧しかったので　お麦だけの弁当でも、とても大切な食べ物でした。〈こまさん〉は、弁当をこっそり拾うと、しっかりとゴミを掃(はら)って、きれいに包みなおしておきました。

お腹が空いたままの父親は、ますます不機嫌でした。
頃合いを見計らって、〈こまさん〉は、
「父さん、腹が空(す)いたじゃろう？」と言って、あの弁当を差し出しました。
　　　「おお！こりゃぁ美味い(うまい)のぉ、うまい、うまい」
さっきまでの不機嫌はどこへやら、父親は、今度は、大喜びで食べました。

またある日のこと、父親が、病気で寝込んでしまいました。
家は、ますます貧乏になって食べるものもありません。
しかたなく〈こまさん〉は、一人で近所の手伝いに行きました。そこで、昼にもらった弁当も、手をつけずに持って帰って、父親に食べさせました。〈こまさん〉は、病弱な母親の代わりに、父親の世話をしながら、昼も夜も一生懸命働きました。そうやって稼いだ、少しばかりのお金で、両親には新しい着物を買い、自分は古いボロボロの着物を繕って着ました

働き者で、親孝行な〈こまさん〉は村の人たちの評判になりました。
「いやぁ、〈こま〉ほど親孝行なもんは、見たことがないのぉ」
「ほうよのぉ、めったにおらんわい」
今治のご城下に来ていた村人がそんな風に、噂をしておりますと、それが偶然、お城で働く人の耳に入りました。そして　とうとうお城のお殿様の耳にまで届きました

お殿様は、家来から〈こまさん〉の話を聞くと、たいそう感心されて「この者を探して　褒め状をとらせよう」と言いました。そして〈こまさん〉に立派な褒め状を送りました。

突然、褒め状をもらった〈こまさん〉は、
「親に孝行するんは、あたりまえのことじゃのに、こんなにええもんを、もろうてしもたわい。」と驚きました。父親は
「ワシの息子は、殿さんに褒められる程の孝行息子じゃ」
と大喜びで、それからは〈こまさん〉に感謝するようになりました。その後も〈こまさん〉は驕(おご)ることなく懸命(けんめい)に働き、両親を大切にして、仲良く暮らししました。
家も、どんどん栄えていったということです。

〈こまさん〉が亡くなった後で、神子の森の人たちが、立派な人だったから後の世にも残るようにと、鈍川村の人々に呼びかけ、大きなきれいな石で石碑を建てました。この人は〈こまさん〉と呼ばれていましたが、本当の名前は、はっきりとは、わかっていません、お墓の石には、『孝子半六の墓』と刻まれています。
今でも、村の人たちは、時々、おまいりしているそうです。

　　「孝行者のこまさん」のお話でした。　　　おしまい

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タイトル

幸門白の落城NEW
七尾七谷NEW
竜王の娘とおされいの桜
千疋峠の桜
千里眼の宥蓮上人
長慶天皇伝説
五人衆さんと施餓鬼
おそめ狸
えんこ
宝剣塔
釈迦山の蛭
蒼社川
中村の弘坊たぬき
あなぐらさん
いぼじぞう
神さんが投げた石
お釈迦さんと花まつり
孝行者のこまさん
蛇淵
へんど墓
白鳥神社と鴨
犬塚池
ごろべえ坂
大松とくそだぬき
だまされたなにわ節言い
けたの池と白蛇
はなかげさん
石折神社
しりやき新兵衛
白椿と黄金

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