第18回  今治木工工芸クラブ



今治木工工芸クラブ

玉川町の老人クラブの皆さんの木工所として発足し、合併後も趣味の会として30名の会員を要する「今治木工工芸クラブ」の皆さんを木工館にお訪ねしました。昨年、奈良原山出土の国宝の多宝塔のレプリカ作成で話題になりましたが、最近は3月に玉川万葉の森に約50体のオブジェを設置し、テレビ、新聞で報道されました。中でも、フクロウが飛び立つ瞬間から着地までをスローモーションのように、11体で表現しているのは圧巻です。普段の皆さんの活動振りや、制作上の苦労話などお聞きしたいと思います。
以下、概要をご紹介します。


スタッフ:
みなさんこんにちは。すばらしい活動をされている「木工工芸クラブ」のお話をいつかは聞かせていただきたいと思っておりました。「この人に聞く」のインタビューはいつもはお1人ですが、今日は皆さんごいっしょにお願いいたします。先ず、会員になったきっかけをお聞かせください。
クラブ員:
波方から参加しています。定年になり、時間が取れる様になったら参加したいと思っていました。趣味を生かすことができればと思っています。
クラブ員:
この木工所は、昔、保健センター辺りにあり、作業している人達を見るに付け、現役を退いたら入りたいと思っていました。
スタッフ:
当時は老人会が使用していましたが、合併を期にこちらに移転し、今は隣の「陶芸館」と共に町内外から愛好者が集まって高齢者の健康と生きがいつくりを目的に利用されていますね。
クラブ員:
ここが出来たきっかけはそうでした。今の馬越会長さんの指導力でみんなが力を 合わせて一つの物を作ったんは、今回で2回目じゃね。
クラブ員:
1回目は国宝の多宝塔があるよね。今治には大三島などに国宝が8.9個あるが、玉川町には奈良原山の多宝塔がある。今は玉川近代美術館に保管されていて、年2回しか見せてもらえんのよ。それでレプリカをつくり、いつでも見れたらいいのにと思いついたんよ。木を使うんはお手のもんじゃったが、鎖の金具は気を使うて、大変じゃった。
スタッフ:
図面を見せてもらいましたが、精巧に書かれていて、寸分たがわぬものが出来上 がったのは素晴らしいことでしたね。今、そのレプリカはどちらにありますか?
クラブ員:
大島の村上水軍博物館です。
スタッフ:
それ以外に、河野美術館で開催された、今治老人クラブ主催の「趣味の作品展」 で5名もの入賞者が出ていますよね。
クラブ員:
毎年出展はしていますが、今年は木工館の知名度を上げるために頑張りました。
スタッフ:
この度の万葉の森のフクロウのオブジェが、共同作としては2作目ですが、なぜ フクロウになったのですか?
クラブ員:
漠然と公園内に何かをつくりたいと思っていました。フクロウは縁起のいい鳥で、羽を広げた姿も美しく、静止から飛び立ち着地するまでを連携させることになりました。
クラブ員:
園内の老朽化した遊具を取り除いた跡に何か可愛いものを、が、話が盛り上がって大きくなってしまいました(笑)。
クラブ員:
木の上にチョコンとなら簡単ですが、大きな作品となると材料の工面から大変でした。
クラブ員:
伐採して2年くらい放置されていた楠を運よく分けてもらうことが出来ましたが、何せ樹齢100年以上の大木ですから、運ぶのも時間がかかりました。とても質のいい木ですから、残った木は仏像を彫ろうと乾燥させています。
スタッフ:
一人ひとりが特技を持って作品づくりをされている皆さんと、私達の玉川サイコーが一緒に出来る事があればと常々思っていました。そして昨年夏のそうめん流しでは立派な竹を細工していただいて、大変お世話になりました。 沢山の人にに喜んでもらえて本当に有難くうれしかったですね。
ところで、こちらで作業をする日は決まっていますか?
クラブ員:
時間のある人は毎月曜日、そうでない人も最終月曜日には集まるようにしています。今回は期間内に仕上げるために、殆ど毎日出て来て頑張りました。
スタッフ:
木工間が有効に利用され、地域の方たちのよりどころになっていることをアピール するためにも、頑張られましたね。そして、木工館を存続させるぞ!の情熱が 大きな力となってフクロウに繋がったんですね。皆さんのその心意気は各方面へしっかりとお伝えしたいと思います。
さて、以前は玉川町民が会員でしたが、今は広く旧今治市内からも参加されている方達にとっての玉川の印象はいかがでしょうか?
クラブ員:
波方からでも大丈夫かなと思ったのが最初でした。玉川はとても活発な町、というのが第一印象でした。今は玉川、波方といわず、今治市を盛り上げたい気持ち です。
クラブ員:
馬越会長の決断力と実行力に脱帽です。リーダーシップが強くて付いて行くのが フーフーな時もあります(一同笑)
クラブ員:
みんなそれぞれに隠れた力を持っていて、互いに認め合いそれらの力をコントロールしながら出してくれるのがいいところです。
クラブ員:
何も分からない時、、機械の使い方を親切に教えてもらったから、新しく入会 される人にも同じように接することが出来ます。これはとてもいい伝統だと思いました。材料の手配もすべておまかせで頼りきりですが、これからもいろんな物に挑戦したいです。
スタッフ:
いいことの連鎖ですね。会員同士のコミュニケーション作りは何かされていますか?
クラブ員:
研修旅行なんかは夫婦でもいいし、カドヤ別荘さんでは懇親会もしました。 富山まで彫刻を見に行ったり、高松では伝統工芸、金比羅歌舞伎も見ました。
スタッフ:
そうして養った英気が、次の創作意欲につながる訳ですね。館内見まわしたところここにはフクロウ等の大作以外にもかわいい作品が見えますね。これは組み木細工ですね。
クラブ員:
組み木細工は孫にお雛さまを作ってやることがきっかけでした。資料探しから始め、好きな絵を紙に書いて拡大縮小し、木に貼り付けて糸鋸を使って細 工をします。これらの本も全部資料で、会員が持ち寄って参考にしています。
クラブ員:
やりだしたらブレーキが効かなくなり「家のことをなぁんんもせん」ゆうてお母ちゃんに怒られる。
(一同爆笑)
スタッフ:
皆さん、ここに来ることが健康作りになっている様ですが、日頃気をつけていることがあれば教えてください。
クラブ員:
何時までも元気で休まんようにしたい。み~んな何にでも首突っ込むけんねぇ。彫金もするし、大抵のもんは何とか成る。
クラブ員:
みんな本職がなんか分からん位何でも出来る。
スタッフ:
私達NPO法人玉川サイコーは、万葉の森を見守ったり、町おこしに力を入れていますが、木工工芸クラブとして何かアドバイスがあればお願いいたします。
クラブ員:
フクロウをきっかけに、全国から自慢の彫刻を持ち寄ってもらい、万葉の森以外にも設置する。温泉には○県○さんの作品、ダムには△県の△さんの作品のように各地に設置する。すると全国から人が集まり、町自体も賑やかになる。森林の多い玉川全体を「木工ひろば」にすればいい。
スタッフ:
大きな夢でワクワクしますね。フクロウを作っているうちに皆さんの気持ちがだんだん盛り上がってきたんですね。
クラブ員:
みんなで一つのものを作ったのは大正解だったと思う。だれでも歳とってしま うけん元気な間に記念になるような物ができてよかった。会長は若いけん、 みんなを引っ張って何でも作ったらええけど、あんまり一生懸命になったらしん どいんよ(笑)
スタッフ:
今回のフクロウは年明けから始めたとは言え、それまでの準備も入れると約1年がかりだったそうですね。
クラブ員:
個人の作品はマイペースでできるけど、大きな作品はみんなのペースを合わせる のが大変。大きくなればなるほど苦労はします。みんなは彫刻をするのが目的で入会していますが、実は木工は木を選んだり、集めたりする面白さもあります。 門田さんは自分で山を歩いて集めるのがすごいよね。。
クラブ員:
木は乾燥してから細工をすることを考えて、50年位前から集めはじめだした。それが今は倉庫にいっぱいになってで150年分くらいはある。ほやけん、使い切るまでは死ねんのよ。(一同大爆笑)
隠居したら作ろうと思とったのに、隠居した ら今度は手が動かんようになって作れん。(再び爆笑)しかも奥さんには内緒で集めとるけんね。
クラブ員:
私が木工の世界に入ったのは、明治20年代築の実家にあった裁ち台を、丸いお盆に加工したのが始まりです。今は木工より竹のほうに興味が出てきて、立ったまま使える長い靴べらや、伊達巻を作る鬼すだれにも挑戦しました。実用的な道具を工夫して作るのが好きですね。そして健康のためにも手先を使うのが役立っていると思います。
スタッフ:
健康と生きがいつくりにピッタリですね。
クラブ員:
要するに誰も作ってないような物を作るのが、みんな好きなんですよ。極めつけは、木魚ならぬ竹魚です。
クラブ員:
四国88箇所を回っていて読経の時、鐘や木を鳴らすのをもっと軽い竹で作ってみたらどうかと思い付いたのが竹で作った竹魚です。作ってみたら軽くていい音がするので好評です。穴を開ける位置で音色が変わるので面白いですよ。
実際に竹魚を出していただき、叩くととてもいい音でした。
スタッフ:
ドレミファ・・・と音階ごとに作れば音楽会も出来ますね。クラブ員全員がそれぞれ違った特技を持っていて、出来上がる作品もいろいろで楽しいですね。皆さん仲間だけどライバル意識もあり、それが個性的な作品作りのエネルギー源になっている様です。今後この力をどのように生かしていくのか、会長さんにお聞きします。
クラブ員:
試行錯誤の会長なので、会員の皆さんの思うような運営は出来ていないかも知れません。思うことは先ず、楽しい会でなければならない。そして今までしてきたまな板削りや、そうめん流しの協力のように、自分たちの楽しみが地域に繋がるならこれ以上の喜びはないです。これから他の活動グループともリンクして、お互いの相乗効果が出るようなことを心がけたいと思います。
 
スタッフ:
長時間にわたり、ありがとうございました。今日欠席の会員さんもいらっしゃいましたが、皆さんの物作りにかける思いと、地域のお役に立ちたい心意気は十分に伝わってきました。
万葉の森のフクロウたちも、大勢の皆さんに愛されることでしょう。