
新緑のまぶしい4月26日、玉川町長谷にお住まいの渡邉哲弘氏(1936年生まれ)をお訪ねして お話を伺ってきました。約束の時間に少し遅れてしまったスタッフを先生はおだやかな笑顔で迎え てくださいました。そして、インタビューに先立って、早くも方言集「ちがうんかん 玉川弁ぞのもし」 の改訂版ができたことを報告をしてくださいました。
(座敷机の上に置かれた湯のみを手に取って)これはもらったものか、どこかで買ったものか
はっきりしませんが、伊予弁が書いてありますね。「なんぞなもし」「だんだん」「おらぶ」「びんだれ」
・・・いろいろ書かれていておもしろいなあと思いました。私自身、方言の中で育ってきましたからね。子どものころ、おばあさんが近所の人と話す時に「~のもし」「~のもし」と「のもし」を連発していました。東予は「のーえ」、南予は「なーし」と言いますね。
「だんだん」も調べていくとおもしろい。初めは「だんだんありがとう」だったものが、ありがとうが省
略されて「だんだん」になってきた。Thank you very muchのThank youがなくなってvery muchだけ
になったようなものです。
そうなんです。意外に早くできました。出版社も急いでくれたようです。以前の本とだいたい同じ内容ですが、改訂版は35ほど新しい言葉を入れました。新しい語句を入れた分、減らしたものもあります。訂正した箇所もあります。
おばあさんの言葉ですが「ゆうべは、おどろいたわい。」「朝の3時ごろにおどろいた。」と言うのを聞いて、「ええっ、何にびっくりしたんだろう」と思いましたね。目が覚めたことなんですね。それから、近所のおばあさんをデイサービスの時など車に乗せると「じょうしきお世話になります。」とか言われる。これは、いつもお世話になりますの意味なんですよ。

本日は、貴重な時間をいただき、方言への思い入れや楽しい思い出話をお聞かせくださいまして、ありがとうございました。どうかお体に気をつけられてますますご活躍ください。
インタビューの間じゅう、先生のお顔は終始穏やかながら、どの話もユーモアにあふれ思わず引き込まれました。誠実なお人柄の中にも、いろいろなことに興味をもって機知に富み、ヤンチャぶりも発揮される柔軟な生き方が感じられました。地域に伝わる細々とした行事にも積極的に参加され、地元の人との交流を大切にされています。先生がずっと方言に関わってこられたのも「玉川が好き。そこに住んでいる人が好き」の思いが本物だったからでしょう。方言集は、まさに多くの人とのつながりの中からキャッチされた言葉の宝物ですね。
「方言は文化財である」という先生のお考えを忘れないようにしたいと思いながら、縁側に囲碁の道具がさりげなく置かれたご自宅を後にしました。