当時の郵便局長だった青井三郎さんによって玉川町広報に平成5年から7年半に亘り掲載された、玉川ウォッチング。 今回、玉川めぐり隊を結成し、青井三郎さんの案内で再度玉川ウォッチングに掲載されていた史跡や文化遺産を訪ねた。 文章は、広報に掲載されていたものを、玉川中学の生徒さん有志に入力いただきました。

1、法界寺



(1)和霊神社

″和霊さん″で親しまれている和霊神社は、当初は法界寺村庄屋の浮穴家の邸内社として、宇和島の本社から勧請して祭られていた。
 しかし、お参りする者がたえないので、延享3年(1746)三島神社境内に奉祀された。
祭神は山家清兵衛公頼公、配神は天命開別命、猿田彦命である。
 旧今治藩主久松定剛公は、厚くこの神を尊信して、現在の地桑坂山に寛政11年(1799)に社殿を建立したもので、玉川町内の神社では最も新しい。
 今治藩の手厚い庇護もあり、漁業・商業・交通安全の神様として、県内はもとより広島県方面にも崇敬者が多い。
お祭りの旧暦6月23日には、大変な賑わいであった。
 境内を散策してみると、まず昭和51年の災害で折れた鳥居(享和元年・1801)。立派な常夜燈(天保13年・1842)。立派な社名額の掛った神門。
その中には等身大の右大臣左大臣等4体の人形はみもの。本殿までには注連石、百度石、常夜燈、狛犬等々、数々の石造物がある。
 玉川町文化財専門委貝会(会長浮穴政成先生)の調査によると、常夜燈は15基(寛政4年、1792から天保13年、1842の寄進)は県下でも6社の仲間入りをするそうです。
 石造物等の寄進者も多数で、近郷近在はもちろん、大島、伯方島、大三島、上島、はては新居郡、宇摩郡の文字も刻まれいている。
 本殿拝殿は建立当時のままで、向拝の天上絵、前面の七福神の彫物、奉納された数々の絵馬、中でも三十六歌仙は珍らしい。 等々住時の時の繁栄振り、賑わいぶりが偲ばれる。
 又永代にあるお旅所の狛犬(文久2年・1862)や常夜燈(万延元年・1860)もすばらしい。
 今治市小泉にある立派な道標(弘化4年・1847)。旧道と新国道の交差する畔にある道標(明治11年・1878)も面白い。
 このように、石造物等の寄進者の住所や寄進年月等を注意深く見て廻ると興味深々、面白い。
 皆さんも是非ためしてみて下さい。

 玉川自然愛好会
 青井 三郎
 参考「玉川の文化財」「玉川町誌」「やまぐるま1〜3集」
 神主の阿部吉康さんにお聞きする。

(2) 和霊神社の祭神

 和霊神社の祭神は、山家清兵衛公頼公である。
神社は通常、何々の命とか、権現様や八幡様をご神体としているが、ご家老の霊を祀っているのは珍しい。
 また、百姓・漁民・町人いわゆる民衆の讃仰により祀られたもので、大衆の守護神として信仰を集めた。
 特に藩政に殉じた山家公が治めた宇和島藩内の民衆に止まらず、 広く他地方の大衆からも敬愛され、著しい和霊神社の隆昌をきたしたところに特異性がある。
 山家清兵衛公は、元和元年(1615)仙台から国替えされた宇和島藩祖遠江守伊達秀宗公の家老職として、 百姓や町人の側に立って善政を布いた。
 しかし、家老桜田玄蕃等と軋轢を生じ、 元和6年(1620)旧暦6月29日に、清兵衛が寝ているところを、青蚊帳の四隅がサッと切り落され、 なすすべもなく無念の42歳の最後を遂げた。
 以後暗殺に加担した者達が次から次ぎとたたりで変死していった。
 一方宇和島藩は幾多の危機を山家公の霊によって助けられた。
 そこで秀宗公は寛永8年(1631)6月に、山家公のご神霊を勧請して、これを児玉明神として祀った。  更に承応2年(1653)お社を桧皮の森に移転し、山頼和霊神社と改称された。
その移転が旧暦6月23日だったので、お祭りは旧暦6月23日、24日である。
 宇和島市の本社の方は、太陽暦の7月23、24日をお祭りとしているが、 法界寺の和霊さんは旧暦の6月23、24日のままである。
 お祭りの日には、蚊帳にまかれて暗殺された故事により、蚊帳をつらないとのことである。
 また、地域を代表してお参りをし、その地域の戸数分の御札を持って帰り、 田に立て稲の害虫や病気封じをしたそうである。
 旧参道は、今治市高橋から山越をして、山伝いに付いており、昭和20年代まで使用されていたそうである。
高橋には立派な道標が残っており、3基は見つかった。
 私は興味を持ち旧参道を辿ってみた。高橋側は何とか辿れたが、 玉川側はわからなくなっており残念だった。
後刻八尋勇さんにお聞きすると、旧道は木材市場の西側の山の中腹を通り、 和霊神社の本殿の東側に下りたものらしい。
 また、大須伎神社を通り、尾根づたいに前述の町境にある道標に出る道、 大須伎神社の南東側にある水路添いの道の3本あったらしい。
 旧参道が復元されると、楽しい散策路になるのではなかろうか。

 青井 三郎
 参考「和霊宮由来」
和霊神社社務所発行。
 渡辺亨さん、八尋勇さんにお聞きする。

玉川ウォッチング