万葉の森(2) 植物園づくり

前回で、町内には万葉植物が多いことを述べましたので、今回はそのうちの木本植物についてお知らせします。 木本植物の多くは楢原山周辺、木地奥山地域に自生していますが、釈迦山をはじめ町内の神社、寺院、個人の家などに植栽されたものを含めますと樹木だけで八十種を超えます。以下に掲げる樹種は町内に現存するものです。
モミ、アカマツ、クロマツ、ツガ、ミズメ、ハンノキ、クリ、アカガシ、クヌギ、アラカシ、ミズナラ、シラカシ、コナラ、ツブラジイ、スダジイ、シリブカガシ、ツクバネガシ、エノキ、ケヤキ、コウゾ、カジノキ、イヌビワ、ヤマグワ、ヤドリギ、ホオノキ、サネカズラ、シキミ、カツラ、アオツヅラフジ、ヤブツバキ、サカキ、ヒサカキ、ナツツバキ、ウツギ、アジサイ、ヤマブキ、ウワミズザクラ、ヤマザクラ、オオシマザクラ、ノイバラ、クサイチゴ、ネムノキ、ジャケツイバラ、ヤマフジ、ナツフジ、フジ、アカメガシワ、ユズリハ、センダン、ヌルデ、ハゼ、ヤマハゼ、イロハカエデ、オオモミジ、マユミ、ミツマタ、カクレミノ、アセビ、ヤマツツジ、ヤブコウジ、センリョウ、マンリョウ、エゴノキ、テイカカズラ、チシャノキ、キリ、アオギリ、ニワトコ、コウヤボウキ、メダケ、ヤダケ、ミヤコザサ、スズダケ、イヌツゲ、サイカチ、ネズ、カシワ、キササゲ。(太字の樹木名は総合公園内に自生していたもの、植栽したもの、万葉植物として植え付けたものです。)
しかし、町内に現存することと万葉の森に植えることとは別問題で、植物園づくりの仕事は簡単には進みません。実生、挿し木などを繰り返して苗木養成をする樹種もあるので年月がかかります。現在、私たちが育成中の樹種はカヤ、カラタチ、ホオノキ、ニッポンタチバナ、コウヤマキ、オオシマザクラ、カジノキ、アカガシ、サイカチ、キササゲ、センダン、ヒメシャラなどです。
次に入手できにくい樹種を掲げます。ミズメ、ハンノキ、ヤドリギ、ウワミズザクラ、シロダモ、タブノキ、ヤマグワなどです。このうちヤドリギ以外は種子のできる樹種なので実生繁殖ができると思っています。
いちばんやっかいなヤドリギは、自然界では小鳥の助けを借りてケヤキ、ブナなどの枝に糞と共に出される粘着力のある種子をすりつけ、発芽する仕組みになっているようです。公園内にも寄生樹のケヤキ、エノキがたくさんありますので、自然界で行われている小鳥の手法をまねて繁殖を試みるつもりです。ヤドリギは半寄生植物で葉には葉緑素をもっており光合成を行っているので、エノキは枯れる心配はありません。
万葉歌人は一首だけヤドリギを「ほよ」と呼んで歌を作っています。山の木の梢のヤドリギを取って髪にさし、冬でも青々としているヤドリギのように長寿を祝い願う気持ちを歌に詠んでいます。

  1. ① シイノキ 万葉名しひ 歌三首
    町内全域に自生する常緑高木。五月頃初めは白、後には黄変する。果実は翌年の秋に熟し、食用になる。
  2. ② エゴノキ 万葉名いちし 歌一首
    町内の奥地、川べりに多い。落葉小高木で、高さは三~五メートルくらい。万葉名の「いちし」に該当すると考えられる植物はエゴノキを含め六種類あり、諸説があって定説がない。六種類に共通する手掛かりの中心は「いちしの花のいちしろく」にある。初夏に五弁の白花を総状花序につける。