万葉の森(51) 楢原山の植物

子持ち杉(二代目)

昭和三十二年十二月十四日に県下で初めて「県・天然記念物」に同時に二本杉の木が指定されましたが、樹齢千年と言われた初代の子持ち杉は既に枯死し、現在名前のついているのは二代目です。初代は目通り一〇・六メートル、二代目は六.六五メートルですが初代に劣らない威容を誇っています。

初代の株元に活着した杉

龍岡下天神社境内に初代の杉の分身(初代の杉の挿し木)があることが分かり、その杉をもらって挿し木苗を養成し、三年前に移植した三本のうち、一本だけ活着しました。恩師八木先生から初代の跡継はこの手しかないと教えられました。三代目の杉を初代の株元で育てるのは夢物語に終わるかもしれません。子持ち杉の周辺に参道沿いに杉の大木が十数本立ち並んでいるのは奈良原神社に関連して植林されたものかも知れないと言われています。自然林にはブナ、ホオノキ、トチノキなどの大木がかなり見られますが、杉は自然林の中ではあまり見かけません。

経塚発掘跡

国宝「伊予国奈良原山経塚出土品」一括は昭和九年八月二十六日、大字木地、楢原山山頂(一、○四二メートル)奈良原神社境内で雨乞いの祈祷のため掃除中、社殿東南隅において偶然発見された経塚からの出土品で、昭和十三年に国宝に指定されたものです。発掘跡の前に最近立派な奈良原神社の社殿ができました。鈍川から舗装された林道が頂上近くまで行けるようになり、奥山の自然探索には好適の場所となっています。

オニノヤガラ(らん科)

山地の樹林下にはえ、ナラタケと共生するラン科の植物です。地生の無葉緑腐生植物で、六~七月、二〇~五〇花を総状花序につけると解説していますが花は二〇そこそこでした。筆者は楢原山では三度目の対面でした。県内でも極(ごく)稀(まれ)な植物として有名です。石鎚山(北側)、高縄山、松山石手川堤、皿嶺、他と故山本四郎先生は記録されていますが、楢原山も仲間入りです。無葉緑の植物なのでナラタケの助けを借りないと生きていけない変わった植物です。楢原山は植物の宝庫と言われますが、珍しい植物が少しずつ姿を消しているのも事実です。

アオギリの花

アオギリは成長も早い元気な樹木です。
花期は五~七月、花は黄緑色で花弁はありません。萼(がく)は鐘形で深裂し、裂片は線形で反り返る。葯(やく)は不規則につき、果実は裂開する。果皮は膜質または紙質で、未熟のときに裂開して種子を露出する。雌雄花を異にして雑居しているなどずいぶん変わった花です。