前月号の広報たまがわ「万葉の森(34)」でで万葉植物と万葉歌との解説は大方終わりましたので、四月からは四季折々(月別)の植物の開花期を中心にご案内しようと思います。開花日を起点にして結実までを見届けて万葉の森管理の資料を作成するつもりです。
※♂雄花♀雌花
アセビ3/21~4/16・アミガサユリ3/24・イロハカエデ4/1・シュンラン3/30・スギ♂4/5 ♀3/7・スミレ4/9・ニワウメ3/18・ネコヤナギ♂3/24 ♀4/5・ソメイヨシノ3/28・ヤマザクラ4/10・オオシマザクラ(今治城4/8)
※開花予定日はいろいろな資料からとったもので、万葉の森の記録ではありません。
万葉時代より観賞用として、庭園に植えられた下木であり、石組や大木の根締めとして植栽されています。四~五月に白い花をつけ、蒴果は九~十月熟して五つに裂け、三日月形で黄褐色の種子を散出する。動物が食べないので木はよく育ちます。繁殖は三~四月と七~九月に挿木でよく活着します。
ははという植物を詠んだ歌は集中一首で、アミガサユリ(別名貝母(ばいも))になっています。貝母は中国から渡来した薬草で、文献によると享保三年(一七一八)に清商が幕府に献納したとなっており、万葉時代にはまだ渡来していないので、「はは」は植物名でないという説もあります。「教材植物」として取り上げていますが、四月を待たずに春一番に咲く可憐な花として庭に一株欲しい植物です。花はたくさん咲きますが、結実するのはごく僅かです。
雌雄雑種で雄花と両性花があり、四~五月葉の萌出と同時に開花し、暗紅色の小花をつけます。果実は十月成熟、十~十一月頃紅葉して美しい。繁殖は実生によります。十月頃には種子が熟すので落果する前に採種しておき、日陰で乾燥させ、春に播種するとよく発芽します。
らん(蘭)は漢語で、蘭がなんという植物であるかについては諸説があり、香草だということでフジバカマを取りあげる説もありますが、梅花を賞する歌に蘭も詠みこまれているので、シュンラン(春蘭)を植栽しました。繁殖は株分けで。以前はどこにもありましたが、林中が荒れてきてずっと少なくなりました。
花期は三~四月、雄花は楕円形で長さ五~六mm、淡黄色、毬果は熟すれば球形、径二~二.五cm、鱗の間にすき間ができて種子ができる。繁殖は主に実生、種子は晩秋から初冬に採種し、三月に床播きします。発芽率は六〇~七〇%。
スミレは集中四首、うち二首は野菜としてのすみれ摘み、残り二首はタチツボスミレを詠んでいます。植物学的にはこの二種は形態的にも生態的にも異なり、スミレは葉が根元から生じ茎は短いが、タチツボスミレは茎が長く伸び、水湿地に好んで生えています。スミレは繁殖力が強く、植木鉢、畑の雑草として困る場合もあります。
集中四首、はねずがどんな植物であるかについては四~五種類の植物が登場しており、現在ニワウメ(別名コウメ)が定説になっていますが、中国原産の落葉低木で、奈良以前に渡来したかどうかが問題になります。 花は四月、葉に先だって、あるいは葉と同時に開き、果実は六~七月に成熟する。繁殖は三月上旬に親株周辺の株分け、実生も可能で六月に採集してすぐに播くと翌春に萌芽します。
集中四首、カワヤナギは水辺を好み、河岸などに生えるので名がつきました。ネコヤナギは絹毛で覆われた花穂をネコの尾に見たてたものです。雌雄異株で、雄株の雄花の花穂の方がふっくらとしています。再生力が強く、挿し木で容易に活着します。
集中四十六首、花は四月、葉と同時に開く。六月頃果実は成熟する。繁殖は実生による。六月に果実を採り、果肉を洗い去り、種子だけにして、乾燥させないように水苔を濡らした中に種子を包み、冷蔵庫で保存させておくと、翌年の春に播種したときによく発芽します。
(付)オオシマザクラ
原産地は日本(房総半島・伊豆半島・伊豆諸島)サクラ類の中では強健な種類で、潮害・煙害に強く四阪島に植えられました。ソメイヨシノより遅れ四月上旬葉と同時に開く。果実は六月熟し、やや苦いが食べられます。繁殖は九月に播種する以外はヤマザクラに準じます。万葉の森には植えたいサクラです。