十月の万葉の森は木の実でいっぱいになります。今月に熟果期を迎えた木々をアイウエオ順に挙げてみましよう。
アオギリ、◎アカガシ、アカメガシワ、アジサイ、アラカシ、イチイガシ、イヌツゲ、イヌマキ、イロハカエデ、ウツギ、エゴノキ、エノキ、力クレミノ、力シワ、力ツラ、力ヤ、力ラタチ、キササゲ、◎クヌギ、クリ、◎ク口マツ、ケヤキ、コウゾ、コウヤマキ、コナラ、サイカチ、サカキ、サネカズラ、サルナシ、◎スダジイ、タブノキ、ツガ、ツ・ツラフジ、ナツツバキ、ナツメ、ヌルデ、ネズ、ネムノキ、ノイバラ、「ハンノキ」、ヒサカキ、ヒノキ、ヒメシャラ、ノダフジ、ホオノキ、マユミ、「ミズメ」、モミ、ヤブツバキ、「ヤマアジサイ」、ヤマハゼ、ヤマブキ、ヤマボウシ、ユズリハ、トチノキ
〔注〕下線 は、木の実が見られる木
「」植栽していない、枯れた木(ハンノキ)
◎翌年の秋に熟果する木※ 植物名だけの木は若木で実を結ばない木
ホオノキは大きなものは高さ三○メートルにもなる落葉高木。一昨年は四月十八日に開花、今年は五月五日開花、五月の開花が平年の記録です。花は二日花で一日目は雌花、二日目は雄花の働きをする両性花なので、花が一つ咲いただけでは実を結びません。大木になるので庭木には不向きですが、縁あって四十年前に岩屋寺からいただいた二年生の苗が筆者宅で大木になっています。人工交配をして結実を試みていますが、中途で落果して成功しません。ところが、今年は実が三果できて、十月の熟果を楽しみにしています。
ホオノキの自生地は楢原山付近では海抜九○○メートル、岩屋寺は六五○メートル、筆者宅の植栽地は五二メートルで、ホオノキの結実の問題解決はこれからの仕事です。
いちしの歌に詠まれた植物は何であるかは諸説が八説もあり、いまだに定説がありません。古代人が白くはっきりしたものに心を引かれていたことから、白い五弁の花が目立つエゴノキを選びました。高地が好きならしいホオノキと対照的に暖かい地域を好むエゴノキは生長も早く、萌芽が強い好陽地性ですが耐陰性もあり、家庭にも欲しい木です。 十月に成熟した核果を採り、種子だけにして採り播きするか翌春に播くとよく発芽します。人工樹形の仕立てはほとんどしないで自然樹形を楽しめる落葉小高木(高さ三メートル)です。
万葉集中、栗の歌が三首ありますが、二首まで三栗がもちいられています。「三栗」は実がいがの中に多くは三個人っていることから、中の枕詞として用いられています。きれいな実が三つ揃って入っているのは少ないのですが、三を願っていたのでしょうか。
万葉の森でもあちこちに野生の栗がありますが、おそらくシバグリ(堅果が小さいもの)でしょう。栽培されるのは大きい株でタンバグリがその代表です。栗は小さいものの方が味が良いが「栗食い食い腹がへる」といわれるように小型の栗は食べるのに手間がかかります。
六十年余り前、竜岡青年学校の女生徒さんの案内で竜岡木地へ朝早く出かけて袋いっぱいの栗を拾ったことを思い出します。
秋、淡紅紫色の花を頂きにつける文字どおりキセルの形をした寄生植物で、一年草、主にススキの根に寄生します。筆者の知る限りでは今治周辺に自生していたナンバンキセルはほとんど姿を消しました。県内でも極稀な植物なので玉川町内の自生地は守らねばなりません。